この建物は瀬戸内海の島の一つである宮島の門前町にあった町屋です。建てられたのは18世紀末ごろで、二階の出窓の出格子やその下の板庇(ひさし)にその時代の特徴が見られ、屋根は勾配が緩く軒の出が深くなっています。
また、土地の狭い宮島では側壁を背中合わせに作るため、妻側の屋根の突き出しがほとんどありません。奥の座敷は明治初年に建てられた別の建物を古い建物の中にはめ込んでおり、材料を運ぶのも大変だった島の事情をよく示しています。
館内には初期伊万里から初期色絵(古九谷様式)・柿右衛門様式、鍋島様式等の名品が揃い、古伊万里の世界を一望することができます。

伊万里焼は今から400年ほど前に現在の佐賀県有田周辺で誕生しました。当初は、中国の陶磁器に描かれた文様や、中国の絵画などを参考に器に文様が入れられました。1650年代頃になると、富士山などの日本独自の文様も描かれるようになります。伊万里焼に描かれた文様の多くには幸福や長寿などの願いが込められています。
本展では、17世紀に日本で誕生した伊万里焼に描かれた文様に注目し、紹介します。

「銹釉染付双鶴文輪花小皿」初期伊万里様式 1640-50年代
松濤園
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