三之瀬御本陣芸術文化館は、独立美術協会の重鎮として活躍した須田国太郎の作品を中心に、日本近現代の芸術家の作品を展示しています。また建物は、江戸時代に対馬藩一行など多くの要人が宿泊所として使用した歴史と趣きのある「本陣」の外観を復元したものです。
尾道を拠点に日本全国を旅し、海や山、さまざまな風景や草花を豊満な色彩で描いた小林和作。本展では、今年生誕135年を迎えた小林和作に注目し、当館所蔵の油彩画を始め、植物や旅先で描いた風景の水彩画作品を展示します。
小林は初期に日本画を学び、後に油彩画に転向。日本画家、洋画家それぞれに幅広く関係を築きました。その中の一人に、洋画家の須田国太郎がいます。二人の交流は1934(昭和9)年、同時期に独立美術協会の会員となったことから始まりました。東京で開催された独立展からの帰途、須田宅に一泊して夜更けまで語り合ったという二人。その後も広島と京都、互いの家に度々訪問し、親睦を深めました。二人展を開催したり、雑誌や新聞の企画で対談を行ったりするなど、さまざまな形で生涯交友は続きました。
また小林は、須田が水墨画の制作を始めたきっかけにもなっており、制作の面でも大きな影響を与えています。この度は、小林の作品とあわせて須田の油彩画や水墨画の作品なども紹介し、二人の交友を辿ります。
【小林和作】
山口県出身の画家、小林和作(1888-1974)は初め、京都で日本画を学びました。文展に出品、入選もしていましたが、次第に油彩画に親しみ始めます。そして1922(大正11)年、洋画に転向する決意を固め上京。1927(昭和2)年に春陽会会員となってからは、同会で活動しました。しかし、1934(昭和9)年に独立美術協会へ移り、それと同時に尾道へ移住します。以後は亡くなるまで尾道で制作を続け、毎年春と秋には全国各地へ写生旅行に出かけて、多くの風景画を描きました。
【須田国太郎】
須田国太郎(1891-1961)は、京都出身の画家です。1910(明治43)年頃から独学で絵を描き始め、1919(大正8)年からの4年間、西洋絵画の研究のためヨーロッパを遊学します。帰国後は美術史の講師をしながら絵を描き続け、1932(昭和7)年、東京の資生堂画廊で初個展を開催。そこで、滞欧中に知り合った里見勝蔵によりその画才を見いだされ、里見の推薦によって1934(昭和9)年から独立美術協会の会員に迎えられます。そこから、須田は本格的に画家としての道を歩み始め、美術史家で画家という稀有な芸術家となりました。
三之瀬御本陣芸術文化館(須田国太郎常設展示館)
公益財団法人 蘭島文化振興財団 三之瀬御本陣芸術文化館 〒737-0301 広島県呉市下蒲刈町三之瀬311番地
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