三之瀬御本陣芸術文化館さんのせごほんじんげいじゅつぶんかかん(須田国太郎常設展示館)


三之瀬御本陣芸術文化館は、独立美術協会の重鎮として活躍した須田国太郎の作品を中心に、日本近現代の芸術家の作品を展示しています。
また建物は、江戸時代に対馬藩一行など多くの要人が宿泊所として使用した歴史と趣きのある「本陣」の外観を復元したものです。



展示案内

「花と鳥」

2024年8月28日(水)~ 11月4日(月)※振替休日

  チラシ(おもてうら

 四季折々に美しい姿を見せる花々や、自由に羽ばたく鳥たちの姿は、古くから多くの人々を魅了し、芸術作品の画題として好まれてきました。本展では分野を越えて、絵画や陶磁器、漆工芸品から花や鳥のさまざまな表現に迫ります。
 古今東西、人々は花や鳥の生態・姿かたちから、縁起物や吉祥につながる寓意的なイメージを生み出してきました。絵画では絆を示唆する水鳥の番いと川楊を描いた平田玉蘊(1787-1855)の《水禽図》や、邪気を払い縁起が良いとされるクジャクと長寿・不変の象徴である松や富貴を示す牡丹をあわせて屏風に仕上げた小村大雲(1883-1938)の《孔雀図》のほか、四季の花鳥を描いた四季襖絵などを展示します。
 こうした掛け軸や、屏風、襖絵のように、日本では暮らしの中に美を取り入れ、日々を心豊かに過ごす工夫を凝らす中で、建具も芸術の域にまで高められてきました。





平田玉蘊 《水禽図》 江戸時代 紙本墨画淡彩



小村大雲《孔雀図》制作年不詳 絹本彩色 六曲一双



 伝統的な画題として描かれた花や鳥の多くは季節感にあふれ、時に繁栄や幸福への祈り、祝意を表すモチーフでもありました。漆工芸品では、江戸後期から明治初期にかけて婚礼調度の意匠として好まれた『源氏物語』「初音」の情景を鶯や梅とともに意匠化し、卓越した手仕事で制作された蒔絵硯箱と文台を紹介します。また、明治から昭和初期に輸出用として作られ、外国人に好まれた精緻な芝山象嵌の作品も見どころです。その他油彩画では西洋的観点をもつ花や鳥の表現に注目します。
 美術館で花々と鳥たちに囲まれるひとときをお楽しみください。


今井政之 《象嵌彩鉄線鼎壷》 1988年 陶器


《平目地初音蒔絵硯箱と文臺》 漆



安井曾太郎 《雉子》 油彩・キャンバス


 芝山象嵌細工
 長く鎖国の続いていた日本では、安政5(1858)年の日米修好通商条約に基づき、翌年、横浜・長崎・函館の3つの港が貿易港として開港しました。神奈川県にある横浜港からは、漆器・陶器・木製品などの多くの工芸品が欧米諸国に輸出されました。欧米諸国の人々はこれらの精巧で優美な工芸品に触れることで日本の文化に強い関心を寄せました。その中でも特に人気を博したのが日本の自然の美しさを職人らの高度な技術で表現した芝山象嵌細工の品々でした。
 「芝山」とは千葉県に残る地名で、江戸時代後期、この地に生まれた芝山専蔵によって創案されたことに由来します。その特徴は、美石・象牙・珊瑚・貝殻・べっ甲などを材料に人物や花、鳥の文様をレリーフ状に彫刻し、これらの文様の形に合わせて漆面や象牙などの土台にくぼみを彫り、はめ込んで制作する象嵌の技法です。そのため、作品には立体感が生まれます。
 芝山細工は欧米の人々を魅了し、貿易商らは欧米の住まいや好みに合った形態や文様にと注文をつけ、これまでとは異なる製品がつくられるようになりました。
 芝山象嵌細工は日本の開国で開花した、時代を映す伝統工芸品ですが、職人は減少の一途をたどり現在、継承者は数名となっています。



《芝山花入》 象牙・黒檀他



《芝山宝石箱》 漆・金工




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