この建物は瀬戸内海の島の一つである宮島の門前町にあった町屋です。建てられたのは18世紀末ごろで、二階の出窓の出格子やその下の板庇(ひさし)にその時代の特徴が見られ、屋根は勾配が緩く軒の出が深くなっています。
 また、土地の狭い宮島では側壁を背中合わせに作るため、妻側の屋根の突き出しがほとんどありません。奥の座敷は明治初年に建てられた別の建物を古い建物の中にはめ込んでおり、材料を運ぶのも大変だった島の事情をよく示しています。
 館内には初期伊万里から初期色絵(古九谷様式)・柿右衛門様式、鍋島様式等の名品が揃い、古伊万里の世界を一望することができます。





展示案内

「継承 古九谷と鍋島」

 2023年9月6日(水)~ 11月27日(月)

 チラシ(おもてうら

 肥前・有田の地で江戸時代初期に誕生した日本最初の磁器である伊万里焼。はじめ、青一色で彩られる染付磁器が生産されていましたが、1640年代に大胆な構図とカラフルな古九谷様式と呼ばれる色絵磁器が生産されるようになります。約10~20年間という短い期間に生産されたにもかかわらず、その特徴的なデザインは多くの人々を魅了しています。その後、17世紀後半から海外輸出へ力を入れるようになることで、色絵磁器の生産は繊細で優美な柿右衛門様式へと移行していきました。
 しかし、この古九谷様式の意匠は途絶えることなく、伊万里焼最高峰の鍋島へと継承されました。将軍や公家、大名への贈答品として生産された鍋島の器は、一級の職人たちの手によって生み出され、江戸時代の間生産されていきます。
 本展では、所蔵品の中から古九谷と鍋島の名品を選りすぐり、軌跡をたどります。



「青磁染付大根文小皿」鍋島様式・1670-90年代



「色絵椿文大皿」古九谷様式・1650年代頃



「色絵芥子文皿」鍋島様式・1690-1730年代



「色絵南瓜文輪花皿」古九谷様式・1650-60年代